のんびり気ままに、安らぎも忘れずに。
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数日振りに猛暑がなりを潜めた土曜日の午後。
寮生達も皆それぞれに休日を謳歌していて、ひっそりと静まり返ったこの時間帯は、本当なら至福の時のはずだった。
寮生達も皆それぞれに休日を謳歌していて、ひっそりと静まり返ったこの時間帯は、本当なら至福の時のはずだった。
「ねえ、燈子ちゃん?」
――こいつさえ来なければ。
「……」
無言のまま、カウンターに掛けた手を払ってやると、奴は大げさに眉を八の字に下げた。
「ひどいなー、折角会いに来てるのにー」
「むしろ来んな」
思わず本音が漏れてしまったのがまずかった。
折角ここまで無視を通してきたというのに、案の定、奴は嬉しそうに相好を崩した。
市村光紀、27歳。
大学時代に同期だった男だ。
私はこの男がどうも苦手だった。
いつでもニコニコしていて人当たりも良く、喋り方は間延びしてはいるが、頭が悪そうな印象は与えない。
実際、国内で五本の指に入る大学のドクターコースで研究を続ける秀才だ。
はっきり言って、この男が私の何を気に入ったのかが解らない。解らないまま、在学中はもとより卒業後もつきまとわれて今に至る。
相手をすれば必ず調子を狂わされるので、できることなら相手にしたくないのだが、いかんせんここは女子寮で、私はそこの管理人。部外者の男が平然と侵入するのを放置するわけにもいかず、結局はこうして相手をさせられることになる。
「……いいから出てけよ」
「あ、お茶もらっていいー?」
「聞けよ!」
「あ、カルピスだー。こっちにしよっかなー」
無駄なあがきだ、わかってはいる。
けれど。
「燈子ちゃん、あんまり怒ってると皺が増えるよー?」
握りしめた拳を眺め、笑う奴に、堪忍袋の緒が切れた。
――こいつさえ来なければ。
「……」
無言のまま、カウンターに掛けた手を払ってやると、奴は大げさに眉を八の字に下げた。
「ひどいなー、折角会いに来てるのにー」
「むしろ来んな」
思わず本音が漏れてしまったのがまずかった。
折角ここまで無視を通してきたというのに、案の定、奴は嬉しそうに相好を崩した。
市村光紀、27歳。
大学時代に同期だった男だ。
私はこの男がどうも苦手だった。
いつでもニコニコしていて人当たりも良く、喋り方は間延びしてはいるが、頭が悪そうな印象は与えない。
実際、国内で五本の指に入る大学のドクターコースで研究を続ける秀才だ。
はっきり言って、この男が私の何を気に入ったのかが解らない。解らないまま、在学中はもとより卒業後もつきまとわれて今に至る。
相手をすれば必ず調子を狂わされるので、できることなら相手にしたくないのだが、いかんせんここは女子寮で、私はそこの管理人。部外者の男が平然と侵入するのを放置するわけにもいかず、結局はこうして相手をさせられることになる。
「……いいから出てけよ」
「あ、お茶もらっていいー?」
「聞けよ!」
「あ、カルピスだー。こっちにしよっかなー」
無駄なあがきだ、わかってはいる。
けれど。
「燈子ちゃん、あんまり怒ってると皺が増えるよー?」
握りしめた拳を眺め、笑う奴に、堪忍袋の緒が切れた。
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