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のんびり気ままに、安らぎも忘れずに。
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 雑然とした室内を見渡すと、坂井は目的の人物に声を掛けた。
「おい笠井」
「課長、よびましたー?」
 手招きをすると、およそ刑事らしくない服装の警部補は、にへらとしまりのない笑顔を浮かべてよってくる。
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 自慢じゃないが、俺は12の歳から女に不自由したことはなかった。
 近づいてくる女は、大抵、俺の家柄や立場に目の眩んだ連中だったが、異性に関心を持ち始めたばかりで、しかもかなりスレた可愛げのない餓鬼だった俺は、これ幸いと色々な相手と遊び歩いた。
 そんな俺が片恋、それもよりにもよって男のおの字も知らないような天然娘だとは、あの頃の自分からは到底信じられない展開だ。
 数日振りに猛暑がなりを潜めた土曜日の午後。
 寮生達も皆それぞれに休日を謳歌していて、ひっそりと静まり返ったこの時間帯は、本当なら至福の時のはずだった。
「……え?」
 皿に乗った白身魚の解剖に勤しんでいた少女は、世にも嫌そうな表情を浮かべて反問した。
 朝靄が、街を包む。
 白く街を塞ぐそれは、仄かな邪気を朝の澄んだ空気の中に溶け込ませていた。
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