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ハロウィンですねー。
今朝、某朝のニュースバラエティの星占いで、1位のラッキーパーソンが「ハロウィンの服装をした人」でした。
……いねえよ!(笑)
ちなみに先週は同じ番組で、同じく1位のラッキーパーソンが「昨日失恋した友達」でした……それ、ひどくね?


さてさて。
ハロウィン小説その2です。
今回は笠井さん。格納しときます。


「トリック・オア・トリートーッ!」
「とりーとーっ!」
 唐突にデスクの脇から顔を覗かせた笠井さんに、俺は書類を綴っていた手を止めた。
「……ええと、笠井さん?」
「何?」
 左手をこちらに差し出し、にこにこと満面の笑みを浮かべた笠井さんの頭には、魔法使いが被るような、黒いとんがり帽子が載っている。
 それはまあ、いいとして。笠井さんの突飛な行動はいつものことだと、百歩譲って認めるとして。
「……その子は?どこで拾ってきたの?」
 問題は、笠井さんの横でニコニコと笑っている5歳くらいの女の子だ。
 全身真っ黒のワンピースを着て、オモチャのステッキ--ピコピコ音を立てながら、変身ポーズを決めたりするんだろう--を持った女の子が、笠井さんと同じように右手を出して、俺を見上げていた。
「下でね、お母さん待ってたんだよね?」
 表情を崩すことなく、にっこりと笑いながら、笠井さんが答える。どうやら、迷子らしい。
 よく見れば、目元にはうっすらと、大泣きしたらしい涙の跡がある。
「駄目でしょーが。勝手に連れてきちゃ」
「失礼な。ちゃんと断ってきましたよ。お菓子もらってくるって」
 なるほど、それで最初の台詞に戻るわけか。
「成川クンなら、何か甘いもの持ってるでしょ?」
 確かに、甘党な俺のデスクには、大抵、あめ玉か一口サイズのチョコレートなんかが転がっている。
「……仕方ないなあ」
 溜息をついて、デスクからあめ玉をいくつか掴み出すと、俺は女の子の手にそれを乗せた。
「ありがとー!」
 小さな両手であめ玉を握りしめ、女の子が満面に笑みを浮かべる。
 つられて笑い返すと、笠井さんがツンツンと俺の袖を引いた。
「成川クン、僕には?」
「アンタ、甘いもの嫌いでしょうが」
「んー、それとこれとは別?」
「別って何さ」
「ほらやっぱり、お菓子もらえなかったら悪戯しなきゃいけないし?」
「…………」
 ニコニコと無邪気な笑顔を浮かべて凶悪な脅し方をされて、俺は押し黙った。
 この人が思いつく悪戯なんて、まず100%被害甚大な内容に決まってる。
「じゃあ、これ」
 眠気覚ましにと置いていたミントガムを数粒渡すのと、廊下の向こうから、「笠井さーん、お母さんいらっしゃいましたよー」なんて声が聞こえてくるのは、ほぼ同時だった。
「お母さん来たって。戦利品見せに行かなきゃね」
 笠井さんはにっこり笑って、女の子を促して踵を返す。
「あ、ハッピーハロウィーン!」
「あろいーん!」
 刑事部屋の戸口を出るところで振り返った二人に、俺ははいはい、と小さく手を振り返した。



お疲れな成ちゃんでした。
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