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のんびり気ままに、安らぎも忘れずに。
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以前決めた大筋だけで、ロクに細部も練りこまずに続けます。
当面の目標は……ええと、困った。(おい)


「……落ち着け、落ち着けって。」
ぜぇはぁと息を整えると、彼は再び呟きだした。
「落ち着いて考えよ、うん、それがええ。」
頭を抱え、じっと地面を眺めたまま、記憶を探る。
「締切り明けて、食うもんなくて、スーパーまで買い出しに行くところやったよな。」
数日間の極限状態からようやく解放されてみれば、保存食用のカップラーメンすら食い尽くしてしまっていた。疲労よりも眠気よりも自己主張の強かった食欲に負け、フラフラと買い出しに出かけたのは間違いない。
「家の鍵……ある。ケータイは……圏外か。」
出掛け際、無造作にポケットに突っ込んだそれらを確認し、そこはかとなく安心感を覚えて、彼はほんの少し落ち着きを取り戻した。
「で……近道しようと思ったんやったな。」
小高い丘の上に建つマンションから最寄りのスーパーに行く場合、裏の神社を突っ切った方が早い。普段なら、運動不足がてら遠回りをしていくのだが、今日は疲労と食欲が後押しするままに、神社の近道を通っていくことにしたのだった。
「……で、いきなり落ちた……はずやんな。」
人気のない神社の片隅をぼんやりと歩いていたはずだ。
それが、空を踏んだ感覚とともに、唐突に落ちた。
よく知った境内の中に階段などない。
てっきり子どもか何かが掘った落とし穴に填ったのだと思った。
「……なのに、何で?」
頭上に見える筈だった落とし穴の縁はどこにも見えない。
空は青く、のどかな林の中を通る一本道に、彼が落下した痕跡だけが残っている。
「どこに落ちたんやっちゅー話やな。」
痕跡が残っている、ということは、自分が落ちてきたことは間違いがないらしい。
相変わらず状況は理解できないが、少しずつ落ち着きを取り戻し始めた彼は、持ち前の好奇心で辺りを見渡した。
「落とし穴は……ない。それらしい穴の入り口も、ない、と。」
上空をぐるりと眺め、彼は呟いた。
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