のんびり気ままに、安らぎも忘れずに。
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05.叔父/叔母、伯父/伯母
叔父が身寄りのない兄妹を引き取ったのは、俺が7歳の時だった。
叔父が身寄りのない兄妹を引き取ったのは、俺が7歳の時だった。
変わり者と評判の叔父は、俺の父の兄にあたる。一族から離れて暮らしている彼の所に、父を除けば大人達はまず行かない。
だから当初、叔父の家に住み始めた兄妹の存在を知っているのは俺達だけだった。
兄妹の兄の方は、俺より少し年上の大人しい少年だった。意志の強さを瞳の色に映しながらも、穏やかさを崩さない、そんな人物だった。
反対に妹は人見知りが激しく、一時たりとも兄の傍を離れようとはしなかった。引き取られてからひと月経っても、彼女はずっと兄の陰に隠れて、怯えた表情で俺や叔父を見上げていた。
あれはおそらく、兄妹の兄の方がいなくなってすぐの頃だった筈だ。
訊いてみたいと思いながらも、ずっと訊けずにいた問いを、叔父にぶつけてみたことがあった。
どこから、どうして彼らを連れてきたのか、と。
彼はその問いをやんわりとはぐらかし、そして言ったのだった。
「ここに辿り着くまでの過程がどうあれ、彼らは僕の子どもだ。少なくとも、僕はそう思ってる。」
そう言って、彼は微笑みながら兄妹の妹の方に手を差し伸べた。彼女がおずおずと歩み寄るのを見守る叔父の眼差しの優しさと強さに、俺は子どもながらに、彼が一族から遠ざかった理由がわかったような気がした。
そして、今。
「あの子は頑張っているみたいだね。」
久々に訪れた俺を当たり前のように迎え、叔父は開口一番そう言った。
「みたいですね。」
「今度帰って来るんだよ。」
ふふ、と嬉しそうに彼が笑う。
「年末ですか?」
「そう。毎年、帰ってくる度にそれはそれは綺麗になってね。」
年を取っても穏やかさを失わないまま、叔父はすっかり親ばかになっていた。
「……それは良かったですね。」
「言っておくが、うちの娘に手を出したら承知しないよ。」
「それは保証しかねます。」
すっかり親ばかと化した叔父の惚気――娘自慢も度を超せば惚気だ――を軽く流し、俺は立ち上がる。
「それじゃ、その頃また来ます。」
「ああ、またおいで。」
あまりに短い滞在時間も気にせず、彼は微笑んだ。
「ただし、うちの娘に……」
「はいはい。それじゃ。」
適当に答え、踵を返そうとして、俺は言い忘れていたことに気付いた。
「あ、そうだ。親父から伝言です。たまには顔を見せろ、だそうですよ。」
「……まあ、その内に。」
苦笑混じりの叔父に、同じく苦笑を返し、俺は今度こそ踵を返す。
「年末には、お父さんも一緒に来るように言っておいてくれないか。」
「伝えておきます。」
手を振って答え、俺は叔父の小さな家を後にした。
だから当初、叔父の家に住み始めた兄妹の存在を知っているのは俺達だけだった。
兄妹の兄の方は、俺より少し年上の大人しい少年だった。意志の強さを瞳の色に映しながらも、穏やかさを崩さない、そんな人物だった。
反対に妹は人見知りが激しく、一時たりとも兄の傍を離れようとはしなかった。引き取られてからひと月経っても、彼女はずっと兄の陰に隠れて、怯えた表情で俺や叔父を見上げていた。
あれはおそらく、兄妹の兄の方がいなくなってすぐの頃だった筈だ。
訊いてみたいと思いながらも、ずっと訊けずにいた問いを、叔父にぶつけてみたことがあった。
どこから、どうして彼らを連れてきたのか、と。
彼はその問いをやんわりとはぐらかし、そして言ったのだった。
「ここに辿り着くまでの過程がどうあれ、彼らは僕の子どもだ。少なくとも、僕はそう思ってる。」
そう言って、彼は微笑みながら兄妹の妹の方に手を差し伸べた。彼女がおずおずと歩み寄るのを見守る叔父の眼差しの優しさと強さに、俺は子どもながらに、彼が一族から遠ざかった理由がわかったような気がした。
そして、今。
「あの子は頑張っているみたいだね。」
久々に訪れた俺を当たり前のように迎え、叔父は開口一番そう言った。
「みたいですね。」
「今度帰って来るんだよ。」
ふふ、と嬉しそうに彼が笑う。
「年末ですか?」
「そう。毎年、帰ってくる度にそれはそれは綺麗になってね。」
年を取っても穏やかさを失わないまま、叔父はすっかり親ばかになっていた。
「……それは良かったですね。」
「言っておくが、うちの娘に手を出したら承知しないよ。」
「それは保証しかねます。」
すっかり親ばかと化した叔父の惚気――娘自慢も度を超せば惚気だ――を軽く流し、俺は立ち上がる。
「それじゃ、その頃また来ます。」
「ああ、またおいで。」
あまりに短い滞在時間も気にせず、彼は微笑んだ。
「ただし、うちの娘に……」
「はいはい。それじゃ。」
適当に答え、踵を返そうとして、俺は言い忘れていたことに気付いた。
「あ、そうだ。親父から伝言です。たまには顔を見せろ、だそうですよ。」
「……まあ、その内に。」
苦笑混じりの叔父に、同じく苦笑を返し、俺は今度こそ踵を返す。
「年末には、お父さんも一緒に来るように言っておいてくれないか。」
「伝えておきます。」
手を振って答え、俺は叔父の小さな家を後にした。
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