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 お前のお祖母さんは本当によくできた人だったんだよ、というのが、あたしの母の口癖だった。


 じゃあ、あんたはどうなんだ、と子どもながらに思わないでもなかったけれど、結局最後まで言わずにいたのは遠慮か、それとも親子の愛情って奴なのか。
 まあ、そんなことは、今のあたしにはどうでも良いことだ。
 あたしがばあさんのことを気にする理由はたったひとつ。
 彼女もどうやら、あたしと同じ力を持っていたらしい、という事だけだ。

 あたしには他人に見えないものが見える。
 人気のない公園にポツンと取り残された公衆電話の脇で俯いている背広の男。
 商店街を忙しそうに何往復もする老婆。
 たった今そこにいたと思ったら、次の瞬間には煙のように消え失せる、常人には見えない何か。
 幽霊ではない、と思う。何故なら、生きてる人間の姿を見ることもあるからだ。
 まあ、生き霊ってのもあるし、俗に幽霊と呼ばれてるものとあたしが見てるものが同じなのかなんて、誰にもわからないわけだけど。

 ただ、あたし自身はそれを残像と呼んでいる。
 その場所に残る誰かの思いや記憶の残り香。あたしに見えてるのは、多分そういうものなんだと思う。
 物心付いた頃には、もう見えていたと思う。それらが他人には見えないのだと知ってからは、極力隠して生きてきた。
 自分の他に、そんなものが見えるという人間に出会ったことはない。
 いたとしても、おそらく同じようにそれを隠しているだろうから、これから出会うこともないだろう。

 だが実際に、かつて同じようなものが見えた人間がいたらしい。
 会ったことすらない、あたしの祖母。
 自分と血の繋がった人間に、これほど興味を抱いたのは、あたしにとって始めての経験だった。
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